在来種のそばには、いつもディレクターがいた。

Sponsored

デザイナーをはじめ、研究者、エンジニア、芸術家、作家…。

創造と組み立ての分野にいる人、向いている人に多いのが、ひとたび没頭すると、時間はおろか、周りが見えなくなったり、音も聞こえなくなったりする人です。

 

こういった人を「在来種」と名付けています。

 

むかしむかし、あるところに、在来種の上司がいました。

 

作業中に話しかけようものなら、

「俺が立ち上がるまでは話しかけるな!!」

「明日にしてくれ!!」

「・・・・・・(無視)」

 

あなたが若い頃はそれでもよかったかもしれませんけどね。

没頭されると困るんです。

 

申し訳ないけど、

大勢で働く現場で、日中の半分以上作業に没頭してる人なんて、アテにならないと思いませんか?

 

日に日にスピードが増していくこの業界で、聞かれたことをすぐに答えられない、レスポンスが悪い、ましてや翌日まで待てなんて、死活問題です。

 

 

こういう人たちこそが長時間労働を助長していて「集中してたら残業なんて苦じゃないだろ」なんて言い放つ様はもう、悪の組織のボスです。

あ~、黒い。黒上司だ。

 

 

当時はそんな黒上司を不満に思うことしかできませんでしたが、何年も経た今、理解はできるようになりました。

 

実は、自分自身も、集中していて思ったより時間が経ってた、なんてことはしょっちゅうあります。

 

でも同時にメールのアイコンが「未読あり」にピコピコしてないか見てるし、別案件でトラブル起きててクライアント発狂中なのは聞こえてるし、もちろん電話が鳴っていたら出ます。

 

 

何が違うのか。

 

答えはディレクションスキルです。

 

ディレクションとは主に情報の交通整理と、スケジュール管理、品質管理をすることです。

社内外のリソース、予算との折り合い、クライアントやフロント営業とのやり取り・交渉など、すべてを把握し、調整し、円滑に進行するのがディレクターの仕事です。

 

そう、黒上司が没頭できていたなら、ディレクターが別に存在していたはずです。

もしくはクライアントの器がでかすぎたか。

 

それなのに、「没頭」「集中」こそが品質だと勘違いしているだけなのです。

もちろん没頭する瞬間も必要ですが、それが全てではありません。

 

仕事をとってくるだけの営業と、作業するだけのデザイナーしかいない会社だったので、否が応でもディレクションスキルが身につき、晴れて雑種になりました。

黒上司、なんか、ありがとうございます。

 

 

在来種を、私は肯定も否定もしません。

ただ、在来種だけを増やそうとするからうまくいかないのです。

 

在来種はすぐに「集中させて」と一人になりたがりますが、集中できる環境を整えるためには、ディレクターとタッグを組むべきです。

 

ディレクションができるデザイナーも増えてきていますが、専門性の追求と分業が明確化できるといいなと思う、今日この頃です。

▼侵略的外来種についてはこちら
https://design-barn.com/archives/467