最近「事前にデザイナーのクオリティを知るにはどうしたらいいか」という相談を受けることが増えました。
クラウドソーシングサイトでのトラブル、著作権違反に関する裁判、パクリ疑惑の炎上なども増えてきたからかもしれませんが、潜在的に不安はあったのかもしれません。
まず、今まで依頼していたデザイン会社、デザイナーはどのように選ばれたのでしょう。
直接の取引の場合は
- 前任者が依頼していた
- 営業に来て、制作実績を見せてもらった
- 知人の紹介
など、実績を見たり、誰かが推薦してくれたり、もしくはデザインコンペもあるかもしれません。
「ある程度の実績」に基づいている、といえます。
クラウドソーシングサイトなどネット上の場合は以下に置き換わります。
- サイトでの受注数
- 口コミ評価
- ポートフォリオ
ある程度の口コミ数があれば
「この人よくスケジュール遅延してるみたい…」
「実績は多いけど口コミを書いているのは一人だけだな…」
「実績は少ないけど評価は高いな…」
など、一定の評価はできそうです。
やはり「経験値」「実績」は重要な判断材料です。
ただ実績を見たところで迷ってしまうのは、実際に制作するのは他社のものではないからです。
今回だけ失敗されても困るし、初回だからとコミュニケーション取れなくても困ります。
校正のクオリティが愕然とするくらい低くてどこから修正すればいいかわからない、
指示内容が途中で煙のように消えちゃうのかな?というくらい何を言っても伝わらない、
ましてや連絡が取れない、納期が間に合わない、なんてことは絶対に避けたいです。
例えばランチなら、1回の失敗で1,000円+30分程+午後のやる気を削られるくらいですみます。
最悪、まずすぎて食べられなくても、夕方まで空腹と戦えばなんとかなります。
デザインの場合は1週間以上、長いと数ヶ月かかり、数万~数十万円の出費になります。
発注前に少しでもリスクを減らしたいと思うのは当然です。
ハイクオリティで芸術的なグラフィック制作ができる=すごいデザイナー
ではないし、
何百万件のアクセスを記録したWEBを制作した=すごく仕事ができる
でもないし、
デザインの品質評価は想像以上に難しいですよね。
では、発注前に少しでもリスクを下げるにはどうしたらいいのか。
デザイナーという立場からではありますが、ハイリスクな取引相手の「コミュニケーション」と「制作実績」の特徴をお伝えします。
「コミュニケーション」の最低ライン、4つのポイント
まず対面、ネット上どちらでも、最低限のビジネスマナーがあるかどうかを確認します。
挨拶と自己紹介ができない
信じられないかもしれませんが、結構いるんです。
メールの一文目から「仕事ください」なんて人はもう絶対やめましょう。
突然やって来て、第一声これを言う人を信用できるわけないですよね。自分のことしか考えていないことが前面に出すぎです。
対面、ネット上でも同じで「挨拶」や「自己紹介」ができることは絶対です。
へりくだり過ぎも気になりますが、対等に会話ができる、TPOを理解していることはビジネスである以上、排除できません。
相手(クライアント)のことを知ろうとしない
自己紹介はお互い必要だと思いますが、自分の話ばかりの人は、基本的に発注側の意図や想いを汲もうとしていないことになります。
発注する人・会社のことを知りたい、という意思がない人は、制作に入っても聞き入れてくれない可能性があります。
スケジュール感の共有ができない
ざっくりとでも「制作は5日以内」「初校提出までに3営業日程度」などの指標を出せない人は注意です。
仕様が決まっておらず制作期間が決められなくても、「A4片面くらいのボリュームだと納品まで1週間程度」「今週は忙しいので〇日からの制作になりそう」くらいは提示できるかと思います。
価格感の共有ができない
こちらもスケジュールと同様、仕様の確定・未確定に関わらず、「通常納期だとこのくらい」「この仕様だと〇〇円」などの目安を教えてもらえば一つの判断基準になります。
「仕様が確定するまでは見積出せません」とまったく価格感を伝えない人もいますがそれは不親切かと思います。「目安」がわからないと話も進みません。
途中で連絡が途絶えたり、スケジュールに堂々と遅れるような人は、
ビジネスマナーが欠けている傾向が強いです。
また、デザインに関して意思疎通ができない人は、
普段から人の話を聞いていないことが多いです。
この点に気を付けながらコミュニケーションをとってみてください。
ちなみに、受注する側、デザイナーも同じところを見ています。
自己紹介もなしに突然原稿を送り付けてくるような方は、いくら潤沢な予算をお持ちでも(だいたいお持ちでない)お断りしています。
大企業でも、零細企業でも、フリーランスでも、目の前にいる、電話口にいる、メールを打っているのは「人」であり、お互いに気持ちよく仕事ができることが一番です。
相手を尊重できない人と長くお付き合いすることは難しいですよね。
制作実績(ポートフォリオ)、チェックするべき4つのポイント
制作実績はクオリティを見る唯一の指標といっても過言ではありません。
名刺にたくさんの肩書きがあろうが、最新のMacBookを持っていようが、関係ありません。
制作実績のチェックポイントは以下の通りです。
ボリュームが多すぎるor少なすぎる
過去に外注できるデザイナーを探していた際、広辞苑かと思うくらいの分厚いポートフォリオを持ってきた方がいました。
あげますと言われてもいりませんよね。100も200も提示して「全部見ろ」というのは自己主張のかたまりであり、取捨選択ができない人に思えます。
長くても5分以内に見終わるかどうかが一つの判断基準かと思います。
WEBをポートフォリオサイトにしている場合はサラサラっと目を通すこともできるので便利ですが、打ち合わせ中に「後で見ておいてください」は、少し手抜き感があります。
「詳しくはWEBで!」を対面でやるんじゃねえよと思ってしまいますよね。
目の前にいる人のことを考えられるかどうかがわかるポイントです。
逆に少なすぎるのもちょっと気になります。
守秘義務や契約上、掲載できないものも実際多いですし、独立したばかりで本当に「ない」ということもあります。
ただその場合も、自主制作は可能なはずで、時間や手間を惜しんでいると思われても仕方ないです。
1つ、2つの実績なら、出さない方が潔いかもしれません。
クライアント層が狭い
時々なんでもできる方もいますが、デザイナーにも得手不得手があります。
インフラ系のクライアントが、アパレルや美容関係の実績しかないデザイナーに依頼するのはかなりのチャレンジです。
同業でなくともBtoBとBtoCの比重や「コンセプト」が似ている実績があるかどうかは要チェックです。
ターゲット層が広いものばかり
作品のターゲット層を見てみてください。
「渋谷にいるような10代女子向けポスター」
「地方へ移住した、元都内タワマンに住むパワーカップル向けパンフレット」
など、例はちょっと狭すぎですがターゲットが絞られたデザイン実績があるか、というのは、バリエーションを知るポイントになります。
「女性」「高齢者」など広域のターゲット層に向けたデザインばかりだと、当たり障りのないデザインしかできない可能性もあります。
制作実績自体がダサい
制作実績、ポートフォリオはいわゆるデザイナーの「顔」です。
画像を貼り込んだだけの、「アルバム」や誰かのデザインをそのまま使った「無断転用」は注意です。
ポートフォリオサイトなら、動作なども気にしてみてください。
制作実績は、作品とコンセプトに矛盾はないか、視認性の高いものか、など1つ1つの作品も大切ですが、ぜひ全体も見てほしいです。
経験だけでなく、仕事に対する姿勢もわかります。
メリハリはあるか、テーマが偏っているか、意外性はあるか、マメに更新されているか、などの「個性」を見出してください。
個性も結局のところ仕事に現れます。
その他にも、基本知識、コミュニケーション能力、制作実績を客観的に見ることができているか、などどんどんヒアリングするべきです。
あくまでも「マッチング」なので、合うか合わないかで判断していいと思います。
絶対的に安全な取引など存在しないと考えて、少しでも不安があれば事前に解消する、もしくはバックアップを準備してから進行するのがベストです。