デザインとは? ー実務についてー

Sponsored

デザインとは何か。
今回はグラフィックデザインの実務について考察したいと思います。

言葉の定義についてはこちらをご覧ください

前回の定義より、デザインは「要求・課題に対して、解決策を計画して視覚化すること」
ということがわかりました。

では、一体何をするのか、デザインの工程を見てみましょう。

Sponsored

1. 要求・課題 2. 解決策を計画 3. 視覚化

案件が決まったら、まずは情報整理です。「要求・課題」が何なのかを明確化します。
5W1Hで整理する場合は以下のイメージ。
Who:誰が必要としているのか?(コンセプト)
Why:なぜ必要か?
What:何を伝えるのか
Where:必要な場所・シーン
When:時期・納期
How:仕様(予算)

Who(誰が)というのは企業や組織、個人など主語にあたる部分なので「株式会社●●です」となりそうな部分ですが、ここはコンセプトです。

コンセプトは日本語で「概念」や「概要」と訳されますが、「芯」になる部分です。
主人公のバックグランド、キャラクター設定のようなものです。

ここがしっかりしていないと、何を決めるのも人まかせ、思いつき、その時の気分、ということになってしまい、統一感のないものが続々と出来上がります。
お城のプリンセスが犬やサルを従えて鬼ヶ島に向かう途中で海賊王になったら忙しいです。魅力半減です。

時代背景や場所、生い立ち、性格、全てが一貫していることで、筋のあるストーリーができます。

・常に最新技術を開発し提供
・地域密着で高齢者が安心できる安全な空間を提供

など、企業や組織、主体がある限りブレない、5W1Hです。

5W1Hの1Wの中にさらに5W1Hが出てくるなんてややこしいですね。
でも基本的には1度決まってしまえば大きく変わることがない部分です。
イベントなどの場合は主催する部署がテーマを追加したり、営業資料の場合は営業部の方針に変わったりもしますが、組織としてのコンセプトは変わらないはずです。

5W1Hは、制作が決まった時点では未確定なことも多いですが、大事なことは「未確定である」と把握しておくことです。
そして他の作業と同時進行でも、必ず実制作までに埋めていきます。

はじめの情報整理がとても大切です。

1. 要求・課題 2. 解決策を計画 3. 視覚化

情報整理ができたら、次は「解決策を計画」するためのラフ(構成)です。

ラフはゾーニング取捨選択という大きく2つの要素に分かれます。

・ゾーニング:おおまかなレイアウトを描く
・取捨選択:文字、写真・グラフィック、装飾の過不足を調整

この2つです。

作業としてはこの2つですが、ここから最初に洗い出しをした課題や要求を1つずつ解決していかなければなりません。

コンセプトを「どこで」「何で」表現するのか。
一番見て欲しいところが一番目に入るか。
使用シーンが想定されているか。
伝えたいことは整理されているか。
些細なものが大切なものを見づらくしていないか。

ここで必要なのは、細かな装飾や原稿の良し悪しではありません。

ラフにはない「山の写真」がデザインにドォーーン!!と出て「こない」と共通認識を持つことです。
初稿の後に新たなキャッチコピーが出現「しない」と念押しすることです。

1つ1つの要素を検証し、ラフを作り上げていきます。

以前にラフ制作のタイミングで
イベントの当日パンフが「いらないのでは?」となり、制作自体を取りやめたこともあります。
その時は、とりあえず依頼がきたのでスタートしたものの、

  • なんとなく毎回作っている
  • でも他の資料と情報が重複している
  • みんな何のためのパンフか不明

という状態でした。

制作していて不明点が多い、一筋縄ではいかないという時は、情報整理の部分に立ち返って再度検証することも必要です。

もらった情報が全部入れば完成ではありません。
お弁当みたいに「フタが閉まればOK」ではないのがデザインです。

ちなみに、最近ラフを描かない人が多いようなのですが、お話を聞いてみると、その中にも2種類あることがわかってきました。

・脳内プランの人(頭の中で構成ができている)
・ノープランの人(ソフトでの制作に入ってから構成と制作を同時進行)

前者はラフの段階でイメージを共有したい場合も、頭の中でできているのですぐにアウトプットできますが、後者の場合は、ある程度完成するまで待つしかありません。

絶対的な良し悪しはないと思うのですが、ラフの段階でコンセンサス取らないと、後で揉めること多しです。
あとから「そうじゃない」だの「考えていたのはこんなイメージ!」だの、ちゃぶ台返しの修正指示がきても文句は言えません。

時間がなくて…となりがちですが、そこは急がば回れ。
少なくとも脳内プラン+口頭確認でリスクを抑えて進行できるようになるまでは、ラフを描くことをオススメしたいです。

1. 要求・課題 2. 解決策を計画 3. 視覚化

ラフでOKが出れば、ここからが「視覚化」のための実制作です。
デザインの作り込み・調整・仕上げに入ります。

この実制作の部分がデザインと思われがちですが、完成度としてはここまでで7割方できているイメージです。
正直なところ、実制作のみを誰かにバトンタッチしても、大きくブレることはありません。

個人的にはラフまでが楽しいところです。
ラフをもらって制作するだけであれば、それはデザインというよりはオペレーションという要素が強くなりますね。

実制作は作業としてオペレーターに任せてしまうという会社もあります。

営業マンがスケジュールや予算管理をし、ディレクターがデザインのコンセプトを詰めるなど、
他にも作業は枝分かれしていることがあります。
でもそれはデザイナーが理解・把握しておかなくていいということではありません。

あくまでも作業分担であることを忘れないでほしいです。
1つのプロジェクトに対してデザイナーが把握しなくていい部分などないに等しいと思います。

そして迷った時はこの基本に立ち返りたいものです。

 

4の配布・検証(課題解決にあたる部分)はリリース方法や評価も多種多様で一概に比較できないので、ここでは割愛させてください。個人としては実務の振り返りで効率化できた部分の洗い出し、レスポンスなどの効果測定ができる場合は考察をまとめる作業をして、次回へつなげるようにしています。